郷土史マニアになろう

第4回は、「知的好奇心をくすぐろう」というテーマで話をしたい。

みなさんは、NHKで放映されている「ブラタモリ」という番組をご存じだろうか。
街歩きの達人、タモリが、ブラブラと街を歩きながら地形や土地に残された痕跡の謎を解き明かしながら、町の歴史や文化に迫る番組である。
この番組は、2011年日本地理学会賞受賞を皮切りに、国土地理院「測量の日」功労者、日本地質学会表彰などを受賞したことから、土木や地質の専門家からも注目され、評価も高い。しかも、一部のマニア向けの番組と思いきや、ほぼ10%以上、ときには20%近い視聴率をかせぐ人気番組である。

それではなぜ人気なのか。私はその理由が三つあると考えている。

一つ目は、徹底的な下調べにより「知的好奇心」を満足させる情報が盛り込まれていること。その情報のマニアっぷりは中途半端ではなく、専門家も唸るような内容が詰め込まれている。
さらに、同行する専門家の話をかみ砕いて話すタモリの解説は秀逸である。

二つ目はタモリの謎解きが痛快であること。現場をみて、仕事の条件を読み解く土木関係者にとって、それは日常に近いものがあるのではないだろうか。

そして、三つ目は映像が綺麗であること。日常の街角の風景、雄大な黒部渓谷と巨大な黒部ダムの風景、どれを切り取っても美しい。美しい映像や写真は人の目を引き、魅了するものだ。

私は、この番組に、土木の魅力を伝えるためのヒントが詰まっていると考えている。ぜひ皆さんもいまお住まいの街の郷土史を読み、かみ砕き、カメラを片手に街歩きにでかけて欲しい。そこには、その土地特有の地形、地質、災害との戦いの痕跡をみつけることができる。そして、そこに人の暮らしを守り、支える大小の構造物をみることができるだろう。その一つ一つに与えられた使命があり、その使命やそれが造られるに至った経緯がある。

先人たちの思いと苦労に思いを巡らせるとき、街を造りあげてくれた先人たちへの感謝が生まれるだろう。ぜひそれを次の世代に語って欲しい。故郷を愛し、郷土を知り、次の世代にそれを伝え、未来の安全に繋げていくこと。それこそいまを生きる土木技術者の使命であると考えている。

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