方向によって性質が違う、それは生き物の証

 第三回では、木材の強さの秘密に迫りましたが、その強さはある方向に対しての話です。木材は強度の異方性材料なのです。
これは、例えばサイコロの場合だと向かい合った1-6の面を押して壊れるまでの強さと2-5、3-4の強さが違うということです。あるいは、あまりよい例ではありませんが、鉄筋コンクリートの鉄筋が入っている方向とそうでない方向の性質が異なるというようなものです。
 なぜ木材がこんな性質を有しているかというと、それは彼が樹木だったからです。樹木は、光合成によりエネルギーを作り出し、それを栄養にして大きくなっていきます。
ところが生育場所を自分で選べないので、過酷な環境でも一本足で立ち続けなければなりません。ライバルとの競争もあることでしょう。
だとすると、限られた栄養で効率よく自分のからだを作りあげることが大切ですよね。軽くて強いという木材の性質は、そんな樹木の宿命を受け継いだものなのです。

 では、なぜある方向なのでしょうか。それはどっちの方向? 方向は、樹木の縦方向です。縦方向には、樹木自身の重さが押しつぶす方向に働きます。風が吹けば風上側には引っ張る力が、風下側には押しつぶす力が働きます。なので、立ち続けるためにはこちら方向に強いからだである必要があります。一方で横方向には大きな力は働かないので、強くなる必要はありません。
つまり、一方向にだけ強くても全く困らないので、生き物として合理的に成長しているわけです。
 ちなみに、木材は普通は細長いものとして使いますが、その方向に強いわけですから、設計には好都合です。ただ、異方性材料だってことは知っておいた方がいいでしょう。

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