二級酒と二級国道

先日、何年かぶりに大阪千日前のホルモン屋「かどや」に行ってきた。戦後復興期の日本を彷彿とさせる肉と酒しかない店である。
この店の日本酒は、未だに「一級酒」と「二級酒」の2種類しかない。豚のコブクロを肴に、かつてと同様「二級酒」(300円)を頼んでふと思った。

皆さん、今の国道は、昔「一級国道」と「二級国道」と区別されていたのをご存知ですか?

日本酒級別制度が制定されたのは1940年。第二次世界大戦終戦後、1949年にそれまでの配給制が解かれ酒類販売の自由化がなされ、その後の級別制度は実質的に「特級」「一級」「二級」の三段階に落ち着き、国税局審査によってそれぞれの等級が認定されました。等級に応じて酒税の税率が定められた訳ですが、誰でもこの表記をみれば「特級」が一番美味くて高品質、「二級」 は不味くて低品質だと思うでしょう。実際は、この等級認定は品質とは全く無関係で、酒造会社の自由な設定に基づく申告が主で、響きだけの酒税区分でした。

つまり、審査を受ければどんな酒でも特級になれる。逆に、いい酒を安く売ろうとする酒造会社 は酒に自信があっても意図的に特級審査に出さず、公然と酒税が安い良い品質の酒を「二級」のまま売り続けた。だから、日本酒好きは「二級」を好んで頼むわけです。この級別制度は、1989年に特級が廃止、1992年に一・二級が廃止されました。現在は、「普通酒」「特定名称酒」など9種類の名称からなる分類体系が導入されています。普通酒は「特撰」「上撰」「佳撰」という名称が登場し、特定名称酒は、ご存知のとおり原料や精米歩合により、本醸造酒・純米酒・吟醸酒等に分類されています。

一方の道路の話。現在、国道は一般国道と一括りですが、1964年の道路法改正前は「一級国道」と「二級国道」に区別されていました。「一級国道」は主要都市を結ぶ幹線道路として1桁または2桁の番号が付けられ、「二級国道」はそれを補完する道路として、主に3桁の番号が付けられました。「一級国道」は、当初1号から40号まででしたが、最終的には57路線が存在していました。

国道1号は、江戸時代の五街道である東海道、京街道であり、現在でもその経路をほぼ踏襲しています。因みに、熊本の国道57号は最後の一級国道となります。沖縄の国道58号は、日本復帰後に追加された国道です。
その後1964年の道路法改正により、一級国道と二級国道という区別はなくなりましたが、当時の建設省(今の国土交通省)により、新たに「直轄国道」と「補助国道」という区分が設定されました。直轄国道は一級国道を引き継いだ形となり、国が管理し維持管理費は100%国が負担します。また、3桁国道でも予算をかけるべき重要路線は直轄国道として政令指定することができます。

対して、補助国道は二級国道を引き継ぎ、都道府県が管理し、維持管理費の国負担は50%となります。基本的に直轄国道の方が設計交通量が多い分、道路の規格(品質)が高く、太い真っ直ぐな幹線道となります。補助国道は設計交通量が少ない分、設計の自由度が高くなりますが、双方の道路規格に明確な区別はありません。私は、車から見える景色も含めてドライブするなら、なるべく補助国道を選んでいます。
「二級酒」と「二級国道」、どちらも一級に劣るという意味ではなく、本来の「良さ」を楽しむならば、断然二級をお勧めします。

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